2025.12.08
好きの居場所
両親が営むダーツバーの常連客だった彼と、交際までに10年の時間が流れた。 「それでもまた出会えたのは、きっとご縁だったのかな」 急がず、焦らず、穏やかに家族になった二人。 美容室、喫茶店、ダーツバー —— 家族がみんな、「お客さんとの時間が好き」という環境で育った英恵(はなえ)さん。 その温もりが、今の「人の輪をつくる力」の根っこになっている。 「収納に入らないものは持たない」という夫の一言で、暮らしは軽やかに変わった。 iPadで絵を描き、習字を書き、焚き火をして、星を撮る。 好きなことを仕事にしなくても、誰かの笑顔につながることが何よりの喜び。 「ここで、6席くらいの小さなごはん屋さんを開けたらいいな」 現状維持が幸せといえる暮らしの、静かな光。
# MABAYUI
# セリタホームズ
# デザインを取り込む暮らし
# 家族の時間
# 暮らしの工夫
PROLOGUE
特別なことは、何もない。 それでも毎日「楽しいね」と言える暮らし。 小さな幸せを丁寧に重ねていく日々の中に、 静かな光が宿っている。 iPadで絵を描く指先。 友人が集まるキッチンから聞こえる笑い声。 週末の庭で焚く火の温もり。 好きなことを、まっすぐに。 そんな暮らしを選んだ夫婦の物語。
Chapter
1
10年の距離
偶然の中にあった、運命の出会い。
はじまりは、両親が営んでいたダーツバー。
店の扉を開けて入ってくる常連客の中に、
今のご主人がいた。
それが最初の出会いだった。
交際までには、10年という時間が流れた。
その間にお互い、いろんなことを経験した。
別々の道を歩き、別々の景色を見て、
それでもまた出会えた。
「きっと"ご縁"だったのかなと思います」
英恵さんはそう言って、やさしく笑った。
いつの間にか並んで歩くことが自然になり、
"家族になる"という選択も、
穏やかにその延長線上にあった。
急ぐ必要はなかった。
焦る理由もなかった。
ただ、一緒にいることが心地よかった。
10年という時間が、二人の距離を測っていた。
Chapter
2
にぎやかさの記憶
笑い声の絶えない場所で育った。
英恵さんの原点には、いつも"お店"があった。
お母さんは美容室を、おじいちゃんは喫茶店を、
お父さんは「ダーツが好きだから」とバーを開いた。
「みんな、お客さんとの時間が好きだったんですよね」
小さな頃から、人の輪の中にいることが"日常"だった。
カウンター越しに交わされる会話。
ドアが開くたびに響く挨拶の声。
常連さんの笑い顔。
その温もりが、英恵さんの中に深く染み込んでいる。
今、友人が自然と集まる家になっているのも、
きっとあの頃の記憶が根っこにあるからだ。
人の輪をつくる力は、
幼い日のにぎやかさから育まれていた。
Chapter
3
ちょうどよさの発見
持たないことが、心地いい。
「もともと掃除が苦手だったんです」
そう笑う英恵さんの家は、今、驚くほど整っている。
無駄なものが見当たらず、空間に余白がある。
変化のきっかけは、夫の何気ない一言だった。
「収納に入らないものは持たない」
最初は少し窮屈に感じたルール。
けれど実際にやってみると、暮らしが軽やかになった。
ものを選ぶ。
残すか手放すか考える。
その繰り返しが、暮らしの"ちょうどよさ"を教えてくれた。
「持たない」ことが我慢ではなく、
むしろ心地いい。
暮らしは、誰かに見せるためではなく、
自分たちが安らげる場所であればそれでいい。
そんな価値観が、やわらかく家全体に満ちている。
Chapter
4
好きを重ねる
仕事にしなくても、いい。
iPadで絵を描く。
習字を書く。
焚き火をする。
星を撮る。
そのどれもが「好きだから、やっているだけ」。
手描きのイラストは、友人へのプレゼントになり、
LINEスタンプになり、
頼まれてつくるメニューチラシになった。
「仕事にしようと思ったことはないけれど、
好きなことが誰かの笑顔につながるのがうれしい」
収益や評価を求めるのではなく、
ただ純粋に、楽しいからやる。
その姿勢が、英恵さんの創作に自由を与えている。
自分の"好き"を誰かと共有できること——
それが、何よりの喜びだった。
Chapter
5
小さな幸せの積み重ね
穏やかな日常が、いちばんの宝物。
週末、友人が集まる。
キッチンから笑い声が聞こえる。
手料理を囲んで、他愛もない話で盛り上がる。
休日は車で星を見に行く。
庭では簡単なごはんをつくって、小さなバーベキューをする。
「特別なことはしていないんです。
でも、毎日"楽しいね"って言えることが幸せ」
夢を聞くと、少し考えてからこう答えてくれた。
「ここで、ごはん屋さんを開けたらいいな。
カウンターだけの、6席くらいの小さなお店。
おばんざいを並べて、みんなで笑いながらごはん食べたい」
大きな野望ではない。
遠い未来の話でもない。
今の暮らしの延長線上に、
自然と浮かぶ景色。
現状維持が幸せ——
そう言える人生は、何よりも豊かだ。
EPILOGUE
夕暮れの庭で、小さな火を囲む。
揺れる炎を眺めながら、二人は静かに語り合う。
「今日も楽しかったね」
その何気ない一言が、
また明日への扉を開いていく。
特別なことは何もない。
けれど、その日常の中に、
確かな光が宿っている。
好きなことを、好きな人と。
それだけで、十分だった。
OFF SHOT
長い時間を経て育まれた絆の象徴である結婚指輪を手作りしたご夫婦。 工具が並ぶ作業台の前で、お互いの指輪を手に笑顔を見せる姿が印象的です。 記事のテーマである「好きの居場所」に重なるように、穏やかな幸せとものづくりの温もりが感じられます。
シンプルで美しいデザインの手作り結婚指輪。 おふたりの歩んできた時間や想いが形になったような、穏やかな輝きが印象的です。
週末の夜、自宅で開かれる食事会のひとこま。 家族や友人が集まり、食卓を囲んで語り合う時間が、依田さんの暮らしの中心にあります。 明るい照明と木の温もりが、人と人との距離をやさしく近づけます。
オリーブオイルで煮込んだブロッコリーやきのこを、こんがり焼いたバゲットと一緒に。 気取らず楽しめる手作り料理は、依田さんが大切にしている“人の輪”をつなぐ時間そのものです。
親族や友人が集まる食事会では、季節ごとの手料理が並びます。 特におでんは、依田さんの得意料理のひとつ。 「温かいものを囲む時間こそ、幸せのかたち」と語る彼女の想いが感じられます。
吊り戸棚の一部をキッチンペーパー専用スペースにすることで、機能的で見た目もすっきり。 依田さんの「片づけは、心地よく暮らすためのデザイン」という考え方が表れています。 小さな工夫の積み重ねが、日々の“好き”を支えています。
吹き抜けから降り注ぐ光がリビング全体を包み、観葉植物の緑が映える。 シンプルながらも温もりを感じるインテリアには、依田さんの丁寧な暮らしの哲学が表れています。 “モデルハウスのように整う”その秘密は、毎日の小さな工夫の積み重ねにあります。
木目の天井とテーブルが温かみを感じさせるキッチン。 収納や照明にもこだわり、使いやすさと美しさを両立。 依田さんの「整えることで心も整う」という暮らしのスタイルが感じられます。
依田さんが描いたオリジナルのLINEスタンプは、日常の表情やしぐさをモチーフにしています。 身近な存在をユーモラスに描くことで、家族との温かなつながりを形にしました。 “好き”がそのまま“作品”になる、依田さんらしい創作のかたちです。
ご友人の結婚式で飾られたウェルカムボードも、依田さんの手によるもの。 iPadで描かれた柔らかなタッチのイラストには、“その人らしさ”を大切にする姿勢が表れています。 身近な人を想いながら描く時間が、依田さんにとっての癒しのひとときです。
キッチン背面に飾られたボードは、依田さんがご自身で描かれた作品。 カラフルなオーナメントモチーフのデザインは、暮らしに彩りを添えるだけでなく、 実はコンセントを隠すための実用的な工夫でもあります。 「生活の中にアートを」という依田さんの感性が光る一枚です。
自然に囲まれたキャンプ場で調理を楽しむ時間は、依田さんご夫婦にとって特別なひととき。 手際よく焼き上げる料理の香りと、ゆったりと流れる時間。 日常の延長線にあるアウトドアが、暮らしの豊かさを教えてくれます。
依田さんのアウトドアライフを支えるのが、この黄色い愛車。 荷台にはブランケットやコーヒーセットが常備され、思い立ったときに自然へ出かけられるよう準備されています。 “好き”と“快適さ”が両立する、依田さんらしいカーライフです。
自宅の庭でバーベキューを楽しむ依田さん。 本格的な道具とリラックスした雰囲気の中、家族や友人と過ごす時間が日々のエネルギー源に。 “暮らしと遊びの境界をなくす”という理想が形になったシーンです。
暮らしの工夫や趣味の話を穏やかに語ってくれた依田さん。 整った空間で、笑顔で話す姿からは“好きなことを丁寧に楽しむ人”という生き方が感じられました。 その姿勢こそが、彼女の暮らしの魅力を支えています。